2026/09/14 23:04

コーンウォールって地名を聞いたことがありますか。
地図でいうと、英国の下の方の左側に突き出ているとこです。
アメリカやカナダに近い方といえばわかりやすいと思います。
半島になっていて、海岸線は高い崖になっているところが多くて、あちこちに深い入り江があります。
ノムさんが訪ねた6月でも波は高く、「そりゃ、削られるよねえ」と思いました。
今日はそんなコーンウォール半島が舞台です。
先に結論から言っちゃいますね。
シーソルトのファッジ、これなかなかおいしいんです。
かっこつけて言いましたが、塩味のファッジのことです。
甘いファッジに塩。
「しょっぱくないの?」
と思われるかもしれません。
ところが、ほんのり塩気が入ることで、ファッジの甘さがめちゃくちゃ引き立つんです。
紅茶と一緒に一粒つまむと、けっこういけます。
味が濃く感じられるようになります。
そんなシーソルトファッジが、どうしてOHISAMAで生まれたのか。
今日は、その話をします。
きっかけは、コーンウォールでした
ノムさんは今年の6月に、英国のコーンウォール半島をレンタカーを借りて1周しました。
その距離はゆうに1000km。
コーンウォールは、ノムさんにとってファッジの聖地でしたから訪ねないわけにはいきませんでした。
とにかくファッジショップがたくさんあります。
お金をたくさん使ってせっかく来たんだから、と時間の許す限り。3日かけて20軒くらい訪ねました。
で、ちょっと不思議なことに気づいたんです。
どのお店にも、シーソルトのファッジがあるんです。
ミルク系、チョコレート系、フルーツ系。
いろいろなファッジが並んでいる中に、シーソルトだけはなぜか当たり前のようにあります。
「海辺だからかなあ」
最初は、そんなことを思いました。
でも、ちょっと気になったのでWiFiが自由に使えるホテルに帰って調べてみました(e-SIMは無制限プランでも使い過ぎると制限がかかるので要注意)。
コーンウォールは昔から漁業や炭鉱業が盛んな港町が多く、塩分を好むというか必要な労働者がいました。
そして、製塩も行われていました。
なるほどー。
海と塩。
コーンウォールの暮らしの中に、塩があったんですね。
そんな英国の港町で何度も出会ったシーソルトファッジ。
当然、作ってみたくなります。
広島にも呉の下蒲刈島で、「海人の藻塩」という超有名な塩が作られていて、ノムさんはレモネードを作るときによく使っています。
材料はもう工房にあるので、すぐ作ることができます。
日本へ帰国してすぐ、レシピを微調整して試作しました。
「塩をえれればいいんでしょ(えれる・・・広島弁で入れるの意)」
そう思って、いつものファッジに塩を混ぜて作ってみました。
ところが。
ねっとり。
また作ってみます。
ねっとり。
もう一度。
やっぱり、ねっとり。
失敗に次ぐ失敗です。
英国のファッジは「ねっとり」した食感のものが多いので別に失敗ではないのですが、OHISAMAは「さくほろ」食感が自慢なので失敗は失敗です。
後になって分かったのですが、塩には砂糖の結晶化を邪魔する働きがあるんですね。
ファッジは生地に大量に溶け込ませた砂糖を再び結晶化させて、あの独特のほろっとした食感を作ります。
そこに塩を混ぜれば、塩が砂糖の間に入り込んでそりゃあ簡単には結晶化するわけがありません。
「塩を入れれば完成」
そんな簡単な話ではありませんでした。
それなら、仕上げに塩をつければいいんじゃないかと、いろいろ試してみました。
溶かしバターに塩を混ぜて、仕上げに塗ってみました。
味は美味しい。
けれど均一に濡れなかったり、いくら殺菌性のある塩が入っているといっても、そもそもバターですから保存性に問題が残ります。
最終的にたどり着いたのが、塩を微粒子まで細かくして、仕上げに表面へ塗る方法。
これならファッジの食感を邪魔しません。
しかも、食べたときにちゃんと塩を感じる。
生地に混ぜた時よりも、舌にガツンときます。
こうして、OHISAMAのシーソルトファッジが完成しました。
ところで、英国でシーソルトのファッジを見たのはコーンウォールだけじゃありませんでした。
実は、その後に英国のいろいろな場所でファッジを目にしました。
ロンドンの有名なバラ・マーケットにも、コーンウォールからずっと離れた湖水地方にもありました。
そして、スコットランドのど真ん中にもありました。
「シーソルトって、コーンウォールだけの味じゃないんだ」
そう気づきました。
英国のあちこちで売られている。
それだけ、英国の人にとって身近な味なんだと思います。
だから、一度食べてみてほしいです。
日本では、まだ「ファッジを食べたことがない」という方がたくさんいます。
そもそもファッジって何?
キャラメルとは違うの?
甘すぎない?
そんなふうに思われるのも、よく分かります。
英国菓子好きな人が集まる英国展でさえも、ファッジを知らない人が半数以上なので、日本ではまだまだファッジを知っている人は少ないのは間違いありません。
だからこそ、まずは一粒。
紅茶を淹れて、その横にシーソルトファッジを一粒置いてみてください。
甘いファッジに、ほんのり塩気。
口の中でほどけるような食感と、最後に残る塩の余韻。
「ああ、これが英国で食べられているファッジなんだー」
そんな風に楽しんでもらえたらがちで嬉しいです。
コーンウォールでたくさんのファッジショップを巡って。
ロンドンで見つけて。
湖水地方でも見つけて。
スコットランドでも見つけて。
そして、日本に帰ってきてから何度も失敗して。
そうして、ようやくOHISAMAのシーソルトファッジになりました。
英国では、こんな味のファッジが親しまれています。
まだ食べたことがない方にも、一度味わってもらえたらと思っています。
きっと、いつものティータイムが少し楽しくなりますよ。
書いている人 ノムさん
広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。
公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。
これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。
そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。
