2026/09/15 22:23


お店でファッジのご試食を配るとき、日本のお菓子では例えようがないので「英国式のキャラメルです」と説明しています。

たしかに、見た目はちょっと似ています。

でも、食べてもらうと全然違うのでみなさんめっちゃ驚かれます。

それを見るのが楽しくて、あんまり具体的な味とかは言わないようにしています。



キャラメルが「ねっちり」としたお菓子なら、ファッジは「ほろっ」とほどけるお菓子。

ノムさんはそんなふうに思っています。

そして、この「ほろっ」が、ファッジのいちばん面白いところです。


そもそも、ファッジって何なんでしょうか?


ファッジは、英国で昔から親しまれてきたお菓子です。

基本になる材料は、砂糖、ミルク、バターなどです。

ノムさんはこれに練乳を入れています。

あとで説明しますけど、砂糖が結晶化しやすくなるんです。


材料だけを見ると、


「やっぱりキャラメルじゃないの?」


と思いますよね。

ところが、作り方が違います。

ファッジは、乳製品と砂糖を煮詰めたあと、冷まして再び結晶化させます。


砂糖は水よりも熱湯の方がたくさん溶けます。

面白いのは、冷えると溶けた状態を保てなくなった砂糖が再び元に戻るという現象です。

これを再結晶化といいます。


この再結晶化させる砂糖の量はレシピで、粒の大きさは製法で細かくコントロールすることで、あの独特な食感が生まれます(今、かっこいいこと言ったかも)。


キャラメルは「伸びる」、ファッジは「ほどける」

キャラメルを口に入れると、むぎゅっ。

噛むと、ねばっと伸びます。

そして口の中でなかなか溶けません。


一方、ファッジは、ほろっ。

舌の上でほどけていいきます。

気が付いたら消えてなくなっています。


もちろん、作り方や配合によって食感は変わります。

でも、ざっくり言えば、この違いです。


同じように甘くて、バターやミルクのコクがあっても、口の中で起きることが違います。

ここが本当にめちゃめちゃ面白いんです。


「砂糖を結晶化させる」のがファッジ。

ファッジを作るうえで、ノムさんが一番気を使うのがここです。


砂糖を煮詰めればいい。

冷やせば固まって自然の法則で結晶化する。

そんな単純な話ではありません。


砂糖をどのように結晶化させるか。

その結晶をどれくらい細かくするか。

そこが、ファッジの食感に大きく関わります。


結晶が大きすぎれば、ざらっとした感じになります。

逆に温度や物理的なショックを完璧に制御できれば、細かな結晶が集まって、ほろっとほどける、なめらかな食感になります。


ファッジを作っていると、


「砂糖って、こんなに奥が深いのか」


と思うことがあります。

実は、前回のシーソルトもここで苦労しました


前回、シーソルトファッジの誕生秘話を書きました。

コーンウォールのファッジショップを何十軒も訪ねて、どのお店にもシーソルトファッジがありました。

それで自分でも作ってみたんです。


ところが、できたのを食べてみたらねっとり。

単純に塩を入れればいいと思っていたら、見事に失敗しました。


あとになって分かったのですが、塩には砂糖の再結晶化を邪魔する働きがあります。

つまり、


「ファッジは砂糖を結晶化させて作る」


ということを科学的に理解している必要があります。

そうでなければ何回やったってうまくいくわけがありません。

ファッジは、見た目以上に繊細なお菓子なのです。


だから、ファッジは「キャラメルの親戚」くらいに思ってください。

細かな違いを覚えてもらう必要はありません。


「OHISAMAでファッジいうのん売っとるらしいけど何なん?」


と聞かれたら、砂糖、ミルク、バターなどを使って、細かな砂糖の結晶を作りながら仕上げる英国のお菓子と言ってあげてください(覚えれん、覚えれん)。

まずは、それくらいで十分です。

なんなら、「ハリーポッターの小説にも出てくるくらい有名なお菓子」で十分です。


ただ一番大事なのは、キャラメルとは全然っ違う食感のお菓子だということ。

これで十分。


とにかく一度食べたら、「なるほど」と分かってもらえると思います。

こうして文章で説明するより、食べてもらったほうが早いです。

そんなことを言われてもオンラインストアで買おうかどうか迷っている人は困りますよね、、、。

だから頑張って説明します。


一粒口に入れてたら、まず甘さを感じます。

次にミルクやバターのコクが舌いっぱいに広がって、その香ばしい香りが鼻に抜けていきます。

そして、キャラメルのように「むぎゅっ」と歯にまとわりつくことなく、ほろっとほどけて消えてなくなります。

信じられないでしょうけどほんとなんです。


「あ、これがファッジか」

「初めて」


となります。

僕がファッジをおすすめするときも細かい説明をするより、


「缶が可愛いでしょう」(なんだそりゃ)


と逃げてしまうことも実は多々あります。

プロとして失格ですよねえ。

でもそれで買ってくれるお客さんが多いこと、多いこと。

もう毎日が葛藤。


そして、紅茶との相性がいいファッジを食べるなら、ぜひ紅茶と一緒にどうぞ。

甘くて濃厚なファッジを一粒。

そこに紅茶をひと口。

口の中に残った甘さを、紅茶がすっと流してくれます。

また一粒食べたくなる。

これが、僕の好きなファッジの楽しみ方です。


広島のお店では、紅茶だけのご注文の方にも、お料理をご注文の方にも、みなさんにファッジを添えています。

お友達や家族で来店された方は、ちょっとずつかじりながらおしゃべりを楽しんでおられます。

ひいき目ですけど、土のテーブルでも話がはずんでいます。

ノムさんはそういう風景が好きです。


まだファッジを食べたことがない方へ。

もし


「英国展で見かけたことはあるけど、まだ食べたことがない」

「ファッジって名前は知っているけど、どんな味か分からない」


という方がいたら、いきなり買い物なんてしなくていいです。

お店に来てもらえたら、8種類くらいはいつも試食を用意しています。

広島弁で言うと、こまい(小さい)のがたくさんあるので、ぜひ召し上がってみて下さい。


かじってみて


「あ、これ好き」


と思うのが見つかったらラッキーですよ。

ノムさんが肩までつかっている、ファッジの沼の入り口に立てたんですから。

あとはハマるだけです(^_-)-☆



書いている人 ノムさん


広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。

公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。

これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。

そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。