2026/09/22 08:00

英国のティータイムに、なぜファッジ?
お気に入りの茶葉を用意する。
マイティーカップとティーポットを温めておく。
スコーンをアルミ箔に包んでトースターで温める。
背が高くて焦げやすいから。
ティーポットに茶葉とお湯を注ぐ。
しばらく待つ。
紅茶をティーカップに淹れる。
スコーンを割って、クロテッドクリームとジャムを塗る。
小腹が空いていたから、ケーキも一切れ皿に。
あー、幸せ。
英国菓子屋しててよかった。
ところで、ティータイムにファッジを食べてみたことはありますか?
ファッジ好きの人でも、
「これ、いつ食べたらいいんだろう?」
という疑問があると思います。
ケーキやスコーンならわかります。
ファッジは朝に食べてはだめなのか。
ケーキみたいに、午後3時まで待たないとだめなの?
職場では食べちゃだめなのか。
ファッジを作って売っているノムさんとしては、ファッジは「紅茶と一緒に楽しむお菓子」と考えてもらうのが、一番しっくりきます。
なぜか。
ファッジは甘いからです。
かなり甘い。
でも、その甘さが紅茶と一緒になると、ちょっと印象が変わります。
たとえば紅茶には渋みがあります。
それが、ファッジの甘さを受け止めてくれる。
それに、ファッジの香りは紅茶に消し去られることがありません。
口の中にふわーっと広がったまま、しばらく残ります。
珈琲は香りが強いので、ファッジの香りを包み込んでしまう。
その点、紅茶はファッジの香りを邪魔しません。
ミルクティーがおいしいように、ファッジに含まれる乳製品のコクと紅茶も相性がとてもいいんです。
エジンバラの老舗ファッジショップでは、製造過程で生まれる粉末状のファッジを、ファッジドリンクの素として販売していました。
紅茶に混ぜて飲むとおいしいので、再利用しているそうです。
ファッジを一口食べて、紅茶を飲む。
すると、なぜかまた次の一口が欲しくなります。
華やかな香りの紅茶は、ファッジのミルキーな香りと合わさると、また違ったおいしい香りになる。
そして紅茶の渋みや爽やかな香りが、口の中からすーっと喉の奥へ連れていってくれます。
その代わり、舌の上には「さっきの、おいしかったな」という記憶が残る。
だから、ついまた一口食べてしまう。
だからファッジは、少しだけでいいんです。
一杯の紅茶と、ファッジを1粒。
紅茶を一口飲んで、ファッジを一口かじる。
そして、また紅茶を一口。
その繰り返し。
ケーキのように、一切れを用意する必要はありません。
買った日に食べきらないといけないこともありません。
休日の朝に、紅茶とファッジで目覚める。
家事や仕事がひと段落した午後に、自分の席でファッジを1粒だけ紅茶と楽しむ。
そして、一日の終わりに。
本場で「キロ買い」する英国人を見て、ファッジは特別な日にかしこまって食べるものではないんだと知りました。
多くのファッジショップでは、きれいなパッケージに入った売り場と、量り売り用の包まれていないファッジをショーケースに並べた売り場を併設していました。
量り売りでファッジを買うと、簡易的な紙袋に入れてくれるので、そのまま歩きながら食べることもできます。
英国展でファッジ専門店のバターミルクさんが、小さな紙袋に入れて手渡しされているのは、まさに本場のスタイル。
日本でも、そういうのが日常的になったらいいなと思います。
さて。
ここまでティータイムにファッジをおすすめしてきましたが、
「じゃあ、どんな紅茶と合わせたらいいの?」
という話ですよね。
OHISAMAに来てくださるお客様の多くは、
「紅茶は初心者だから、、、」
と前置きされる方がとても多いです。
珈琲屋さんで、そういうことを言う人はあまりいませんよね。
紅茶って、まだまだ敷居が高いんだと思います。
ノムさんだって、「BREW TEA」を知るまではド素人でした。
飲み比べてみて初めて、
「ダージリンは水色(すいしょく)は薄いけど、香りは華やかで甘いんだ」
「アッサムは、そのまま淹れると渋みが強いけど、ミルクティーにすると一番おいしいな」
ってことが分かるようになりました。
そういうことを体で理解した上で、お客様に自分の言葉でお伝えしなくてはいけない。
だから、日本紅茶協会が出版している「おいしく学ぶ紅茶のきほん」は、写真が多く、コンパクトにまとまっているところが気に入って、何度も読み返して勉強しています。
でも、そんなに難しく考えなくても大丈夫。
基本的には、ファッジはストレートで淹れた紅茶なら、なんでも合います。
香りの強すぎるフレーバーティーは、ファッジのミルクの香りに勝ってしまうので、ちょっと遠慮したほうがいいかもしれませんが。
ファッジだけだとお腹が減るかもと思うのであれば、クロテッドクリームのファッジなら、王道のプレーンなスコーン。
風味も味わいも濃いラムレーズンのファッジなら、軽い味わいのショートブレッド。
そんな組み合わせもおすすめです。
紅茶を淹れる。
カップの横に、ファッジをひとつ。
まず紅茶をひと口。
そしてファッジをひとつ。
「ほろっ」と崩れたところで、もう一度紅茶。
たったこれだけ。
でも、いつものティータイムが少し楽しみになる。
ノムさんは、そんなふうにファッジを楽しんでもらえたらと思っています。
そして、ファッジが初めてなら、まずは2粒入りからどうぞ。
書いている人 ノムさん
広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。
公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。
これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。
そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。
