2026/09/29 08:00


今でこそ、英国展に呼んでもらえるようになったノムさん。

しかし、その頃のOHISAMAは、そんな華やかな場所とはかなり遠いところにいました。


英国菓子屋になる前は、まさに彷徨っていました。

パンを焼いて、ピザも焼いて、カツサンドもフルーツサンドも作っていましたから。

駐車場にある大きな看板は、ペンキを担いで脚立に上り、20回は書き変えました(絵描きかい!)。


ピザが美味しかったからと、翌週にまた来てみたら、もう焼いていない。

フルーツサンドしかり。

売れない。

そりゃそうでしょ。


でも、宮島でパン屋をしていた頃から焼いていたスコーンだけは、なぜか売れ続けていました。

だったら、スコーンをもっとちゃんと調べてみるか、、、。

英国菓子の魅力を日本に伝えたい。

そんな気持ちは、全然ありませんでした。

もう後がないから、仕方なくです。


本屋でスコーンのレシピ本を探して読んでいると、スコットランドにスクーン城というところがあり、王様が座る四角い石の椅子がスコーンの原型になったという記述を見つけました(諸説あり)。

その流れで、スコーンが英国菓子であることを知り、そこから英国菓子の本を手に取るようになりました。

後に英国展で知り合うことになる、佐古さんやステイシー先生、中山さんの本も読みました。


一読して、

「なんて華がないお菓子ばかりなんだ(笑)」

と思いました。

それくらい、色も形も地味。


買った自分が言うのもなんですけど、

「よく買う人がいるな」

とさえ思いました(みなさん、本当にごめんなさい)。


でも、文章がとんでもなく面白かった。

一つひとつのお菓子に、

なぜ生まれたのか。

どこの地域のお菓子なのか。

なぜ、そんな形をしているのか。

なぜ、そんな名前がついているのか。

そんな話が、ぎゅっと詰まっていました。

何度も読み返しました。


そして、レシピ通りに作ってみる。

見た目は地味なのに、食べてみると味が複雑で、そこにも惹かれました。

あの頃は、毎日1品は作って食べていましたねえ。


気が付いたら、また看板を描き変えていました。

「英国菓子と紅茶のある暮らし OHISAMA」

2023年の終わりごろの話です。


英国菓子の一つ、ウェールズの名物ウェルシュケーキも作りました。

平べったい丸い形をした、スパイスを利かせたパンケーキのようなお菓子です。

広島では、まったくと言っていいほど売れませんでした。

でも、焦がさずに焼けるようになっていくのが嬉しくて、作っていました。

ファッジのミルクバターと一緒で、「素振り」のような「稽古」が楽しかったんだと思います。

この頃には、スコーンのことは頭からすっかり消えていました!?


そんなある日。

ノムさんが発信したウェルシュケーキの投稿を、BREW TEAの山家さんが偶然見つけてくれました。

山家さんは、ウェールズにあるウェルシュケーキ屋さんを英国展へ招へいするなど、英国と日本をつなぐ仕事もされていました。

そのご縁で、OHISAMAを三越伊勢丹さんに紹介してくださったんですね。


そして、初めてのバイヤーとのオンライン面談。

いろいろと概要を説明していただいて、最後に、


「では、〇〇くらいの商品をお願いします」


と言われました。

桁違いの数字です。

しばらく固まりました。

すると、


「売れますから、大丈夫ですよ」


と。

そんな、売れますからって、、、。

OHISAMAですよ。

ウェルシュケーキ、全然売れてませんよ。

ついこの間、英国菓子屋になったばかりですよ。


でも、本当にそこからでした。

ここから先は、あなたが知っているOHISAMAです。


英国展に呼んでいただくようになり、英国菓子をもっと知りたくなって、英国まで行くようになりました。

そして、ファッジに出会いました。

まさか、売れなくなった店で「仕方なく」始めたスコーンの深掘りが、ここまで自分を連れてくるとは。

人生って、本当にわからないものです。

また、どこかの英国展でお会いしましょう。