2026/09/30 08:00

まず結論から言いますよ。

ファッジは、砂糖・乳製品・バターなどを煮詰め、冷やしながら砂糖の結晶を作って固めた、英国で親しまれているお菓子です。

そして、ノムさんが惚れに惚れ込んで、英国まで勉強しに行ったお菓子です。


見た目は地味。


「そんなことないですよぉ~」


とお気遣いいただいても、作っている本人が言うのだから間違いありません。

正直、ほとんどの英国菓子がそうであるように、ファッジも見た目に華がありません……。

初めて見た人が、「これ、食べてみたい!」と思うビジュアルかというと、うーん。

思わず言葉に詰まってしまう。

そんなお菓子を、自分は作っています(笑)。


お店では、ファッジが初めての人に「英国式のキャラメル」と説明しています。

それは、材料と味わいが似ているからです。

けれど、大きく違うのが、作り方と食感。


キャラメル

砂糖を焦がして作る
↓
なめらか、ねっとり


ファッジ

砂糖を結晶化させる
↓
ほろっと、サクッと、口の中でほどける


つまり、ファッジは食感に特徴があるお菓子なんです。

ノムさんは日本に生まれ育って半世紀も経ちますけど、こんな食感のお菓子は一度も味わったことがありませんでした。


口に入れた瞬間は、少し固く感じます。

でも、舌に触れるとほどけていくんですね。

そして、砂糖の粒がほんの少し感じられる。

キャラメルのようななめらかさとも、キャンディのような硬さとも違う。

この独特の食感が、ファッジの面白いところです。


ここで、作り手側の話を少しだけしますね。

同じ材料でも、

・煮詰め方
・冷まし方
・混ぜ方

など、職人の加減で食感が変わります。

ちょっとした違いで、柔らかいキャラメルのようになったり、硬いキャンディのようになったりするんです。

この話は、製菓学校の生徒さんたちには知っておいてもらって損はないと思うのですが、「ノムさん、くどすぎっ!」ってくらい長くなってしまうので、それはまたいつか(笑)。


以前もお伝えしましたように、ファッジの本場にあるファッジショップを、レンタカーや弾丸フライトで回りました。

OHISAMAと配合割合に若干の違いはあっても、材料は変わりません。


コーンウォールのファッジショップで売られていたファッジは、「ねっちり」「むっちり」とした食感。

でも、舐めていて柔らかくなり、舌の上で転がしてよーく味わってみると、味そのものには大きな違いはありません。

砂糖の勉強をした今だからわかるんですけど、煮詰める温度の違いが、あの食感につながっているんですね。


OHISAMAのレシピでも、本場のようなファッジを作れと言われれば作れます。

でも、作りません。

だって、日本でファッジの市場をOHISAMAが創造したいですからね。

同じものを作っていたって、しょうがないじゃないですか。

英国で学んだことを、そのままコピーするのではなく、日本でファッジを食べる人が増えていく形にしたい。

そこは、ノムさんなりに考えています。


そして、英国と日本では「ファッジの売り方」も違います。

英国には量り売りがあります。

ショーケースの中で棒状になっていたり、大きなかまぼこ状になっていたりするファッジを、グラム単位で販売しています。

買っていかれる量も、日本とはちょっと桁違い。


ノムさんが訪ねたコーンウォールやエジンバラのファッジショップは、観光地に店を構えているところがほとんどです。

じゃあ、観光客ばかりかというと、そうでもない。

店主さんと親しそうに話し込む地元の人も多かったんです。

だから、ファッジが特別なお菓子ではなく、日常のおやつになっていることが窺えます。


偶然なのか、犬の散歩のついでに店に入っていかれる姿もよく目にしました。

散歩とファッジを買うのが、セットで習慣になっているように見えたんですね。

そう考えると、

OHISAMAは、まだまだだなー。


定番のシーソルトやクロテッドクリーム、ハニーコームは、どのお店でも売られていました。

でも、ミントチョコとか、他の英国菓子をアレンジしたロッキーロードファッジとか、上下に2つの味をくっつけたファッジとか。

お店ごとに、ちゃんと特色がありました。

種類がこんなに多いということは、それだけ英国ではファッジが普通のお菓子なんでしょうね。


ケーキのように、特別な日に食べるものではありません。

一方で、ポテトチップスのように、無意識に大量に食べるものでもありません。

紅茶を淹れて、


「ちょっと甘いものが欲しいな」


というときに、ひと粒。

、、、いや、ひと塊り?!


とはいっても、ファッジを知らない人に、いきなり「ひと塊り」と言われても困りますよね。

OHISAMAの20粒入りや7粒入りの缶も、最初はハードルが高いと思います。

だから、


「まず一度、食べてもらいたい」


という思いで、2粒入りを作りました。

カレーだったら、インドと同じようにごはんを食べる文化が日本にもあったから広まりました。

でも、ファッジは知っている人が少ない。

相性のいい紅茶も、飲む人が少ない。

それじゃあ、どうしようもありません。

藁にもすがる思いで作ったのが、本音です。


で、ファッジって結局どんなお菓子なのか。

ものすごく簡単に言えば、


「紅茶と一緒に、一粒楽しむ英国のお菓子」


と、ノムさんは思っています。

まだファッジを食べたことがないなら、一度でいいので、紅茶とファッジを試してみてください。

たぶん、最初は、


「甘すぎっ!」


って言うと思います(笑)。

でも、そのあとに紅茶を一口。

そこで、


「ああ、なるほど」


と思ってもらえたら、嬉しいです。


書いている人 ノムさん


広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。

公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。

これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。

そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。