2026/10/02 08:00

ファッジの材料を聞いたら、たぶん拍子抜けすると思います。
・砂糖
・バター
・ミルク
・練乳
基本は、これだけです。
思わず、
「え? ファッジってそんなもん?」
とツッコミが聞こえてきそうです。
ノムさんもレシピを初めて見たときは、そう思いました。
例えば、英国生まれのかの有名なヴィクトリアサンドイッチケーキ。
スポンジケーキにバタークリームとジャムを挟んだ、見た目はとってもシンプルなケーキです。
でもレシピを見てみると、
・小麦粉
・卵
・砂糖
・バター
・粉糖
・シロップ
・バニラビーンズ……
など、いろいろな材料が出てきます。
もちろん、レシピによって違いますよ。
それに比べると、ファッジの材料がいかに少ないか。
なのに、ちゃんと「お菓子」になってしまうんです(笑)。
ただ、怖ろしいのはここからです。
材料が少ないので、
「簡単に作れるんじゃない?」
と勘違いしてしまう。
初心者が落ちる、甘い罠。
まるで、きれいに作られた落とし穴。
全然、気づかない。
それくらい材料が少ないと、油断してしまうんです。
実は作るのが難しく、ごまかしが効かない。
それに気づかないと、穴からなかなか出られません。
ヴィクトリアサンドイッチケーキなら、バタークリームやラズベリージャムをサンドできます。
おいしさを付け足すことができます。
でもファッジは、そうはいきません。
基本的に、付け足すものがありません。
だから、
砂糖をどう煮詰めるか。
どこで火を止めるか。
どう冷ますか。
どう混ぜるか。
どう結晶化させるか。
ちょっとした違いが、そのまま仕上がりに出ます。
ノムさんは最初、
「材料が少ないんだから、ちょろい」
とさえ思いました。
1回目は、偶然うまく作れました。
今思えば、偶然というより、宝くじを1枚だけ買ったら、それが1等だったくらいの奇跡です。
温度計でちゃんと測りもせずに、よくできたものです。
ところが案の定、2回目以降は全然うまくいきません。
柔らかすぎたり。
キャラメルみたいになったり。
飴みたいに硬くなったり。
「なんでじゃいっ!」
の繰り返し。
少ない材料をどう組み合わせ、どう作っていくか。
ちょっとした違いで、びっくりするくらい仕上がりが変わってきます。
ここにファッジの面白さがあります。
まあ、失敗を重ねているときは、全然面白くありませんけど。
何十回か作っているうちに、
「あ、今度のはうまくいく」
と、鍋の中の生地を見て分かるようになってきました。
生地作りのコツが、少しずつ感覚的に分かってきたんです。
でも、まだ落とし穴があります。
最後のかき混ぜ方がゆっくりだと、仕上がりの食感が変わります。
逆に、鍋の中でしっかりかき混ぜていると、今度は冷えて固まり、型に流しにくくなる。
語るも涙、聞くも涙。
落とし穴は1か所だけじゃないんです、、、。
そうやって、ようやくできた基本のミルクバターファッジはシンプル。
そこに、
アールグレイ茶葉 → ロイヤルミルクティー
ラムレーズン → ラムレーズン
となります。
もちろん、分量は調整しますよ(笑)。
材料が少ないからこそ、たった一つ加えるだけで、味がガラッと変わります。
ノムさんは、ファッジを作っていて、そこも面白いと思っています。
足さないからこそ、分かるものがある。
砂糖。
バター。
ミルク。
練乳。
たったこれだけ。
なのに、ちゃんと「また食べたい」と思うお菓子になる。
お菓子って、材料をたくさん入れれば、おいしくなるわけじゃないんですね。
だからノムさんは、ファッジ作りをやめられないんです。
材料は少ないけど、作るのは簡単じゃない。
ひょっとして、落とし穴って沼のことかもしれません。
ノムさん、完全にハマってしまいました。
書いている人 ノムさん
広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。
公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。
これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。
そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。
