2026/10/08 08:00

初めてファッジを買うなら、おすすめはどれですか?
これは、お店で本当によく聞かれます。
ミルクバター?
ロイヤルミルクティー?
ラムレーズン?
クロテッドクリーム?
4種類もあると、初めての人は迷いますよね。
ノムさんなら、迷わずミルクバターをおすすめします。
なぜなら、ミルクバターには、OHISAMAのファッジ作りの始まりが全部詰まっているからです。
OHISAMAで初めてミルクバターファッジを作ったときのことは、今でも覚えています。
完成したファッジを型から取り出して、きれいにカットできたものは家族や居合わせたお客様に食べてもらおう。
そう思って、端っこの形の悪いところを自分で食べました。
でも、これが結構大きなひとかけだったんですね。
口に入れた瞬間、
「やばい!」
一人なのに叫びました(笑)。
「なんじゃこれ、めちゃくちゃ美味しいじゃん!」
そんな感じでした。
奇跡的に、最初に作ったミルクバターファッジが、ものすごく美味しかったんです。
ところが。
「最初から美味しく作れたんだから、ファッジ作りなんて簡単だったんでしょう」
と思ったら、大間違いです。
最初の一回が、奇跡だっただけです(笑)。
その後は、何度作っても食感が全然安定しませんでした。
ある時は固すぎて噛めない。
溶けないから、ずっと舐め続けないといけない。
柔らかく仕上がるとキャラメルと変わらない。
同じように作っているつもりなのに、仕上がりがまるで違うんです。
そこで温度を測り、時間を管理し、攪拌のスピードや時間を見直していきました。
そうやって少しずつ、ファッジのことが分かるようになっていきました。
ミルクバターの材料は、とてもシンプルです。
バター、砂糖、練乳、ミルク。
それ以外は入っていません。
だからこそ、ファッジそのものの味が分かります。
甘さ。
ミルクのコク。
バターの風味。
そして、あの「ほろっ」とした食感。
何か別の味で隠すことができないんです。
だからノムさんにとって、ミルクバターは基本であり、特別であり、格別なんです。
もちろん、ミルクバターだけがファッジではありません。
ノムさん自身、ファッジを作りながら、少しずつ味を増やしてきました。
その順番にも、僕なりの意味があります。
次に作ったのが、ロイヤルミルクティー。
「ファッジを知らない日本の人にも、食べるきっかけを作りたい」
そう思って、紅茶好きのためのファッジを作りました。
その次がラムレーズン。
ちょっとクセがあります。
レーズンはそんなに好きじゃなかったけど、ラム酒に漬けてファッジにすると、これが本当に美味しいんです。
そしてクロテッドクリーム。
ファッジの聖地と呼ばれるコーンウォールの空気を吸いながら食べたからこそ、「だからこの場所でクロテッドクリームのファッジが生まれたのか」と納得して作っているファッジです。
もう一つ、僕が英国に行ってから見方が変わったファッジがあります。
シーソルトです。
最初は、
「甘いファッジを塩味にするなんて、英国人は不思議な味付けをするなあ」
くらいに思っていました。
ところがコーンウォールに行ってみると、20軒以上のファッジショップでシーソルトを見ました。
港町のファッジショップでは、ほぼ当たり前のように置いてあるんです。
「これは、単なる変わり種じゃないな」
そう思いました。
現地のファッジショップあから作る意味というか、お店の意思みたいなものを感じたんです。
歴史からファッジを見てみたい人には、チョコレートも面白いです。
ノムさんはVassar大学のアーカイブに残っている古いファッジのレシピを見つけて、実際に作ってみました。
それが、チョコレートファッジ。
ちゃんと美味しかったです(笑)。
ただ、温度の記載がなかったので、僕が作るファッジとは違って、かなり柔らかい仕上がりになりました。
「昔のファッジって、こういうものだったのかー」
と、ファッジの歴史を知る面白さがあって、ちょっと賢くなった気分になりました。
こうしていろいろなファッジを作ってきましたが、初めてファッジを食べるなら、ノムさんはやっぱりミルクバターをおすすめします。
実際、英国展でも、初めてファッジを買う方は、ほとんどがミルクバターを選びます。
1日に350〜400人くらいのお客様が来られる英国展に出ると、はっきり傾向が見えてきます。
ファッジを買ってくださる方は、来店者数に対して半分以下です。
「ファッジって何だろう?」
という、まだ知らないお菓子に1000円以上払うのは、やっぱりハードルが高いんですね。
それで、2粒入りを作りました。
まず食べてもらう。
「あ、これ好き」
そう思ってもらえたら、その次に7粒でも20粒でもいいんじゃないでしょうか。
と言っても、オンラインストアのお客様はファッジが初めての方でも20粒入りを買われる方が圧倒的に多いので、ノムさんよりよっぽど肝が据わっています。
それでもその最初の一歩には、やっぱりミルクバターがいいと思っています。
ファッジを知らない人に、いきなり「この味が一番おすすめです」と言うのは、ちょっと違う気がします。
まずは、ファッジってこういうお菓子なんだと知ってもらいたいんですよね。
そのためのミルクバターです。
ノムさんが初めて作って、
「やばい!」
と一人で叫んだ、あの味。
もし初めてファッジを食べるなら、まずはこれを食べてもらいたいのです。
そして、
「次は違う味を食べてみよう」
と、ノムさんみたいにファッジの沼にハマっていってもらえたら嬉しいです。
ミルクバターから始まって、ロイヤルミルクティー、ラムレーズン、クロテッドクリーム。
そして、季節やイベントごとに新しい味も作っていきます。
まずはミルクバターから。
書いている人 ノムさん
広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。
公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。
これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。
そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。
