2026/10/11 08:00

最近、OHISAMAのオンラインストアを見ると、ファッジがずらっと並んでいます。
ミルクバター、ロイヤルミルクティー、ラムレーズン、クロテッドクリーム。
小袋があって、缶があって、大袋があって。
先週までは、限定ファッジまでありました。
でも、OHISAMAはもともとファッジ専門店ではありません。
スコーンも作るし、ビスケットも作る。
ウェルシュケーキも、コテージパイのような料理だって作ります。
そもそも、ノムさんは16年間、お菓子やパンをいろいろ作ってきました。
それなのに、なぜ今、ファッジを一番上に置いているのか。
実は、これにはちゃんと理由があります。
きっかけの一つは、親戚の経営者から教えてもらったことでした。
「広いところを全部取ろうとするんじゃなくて、まずは自分の得意なところで一番を作る」
そんな話を聞いたんです。
彼は包装資材問屋の会社を経営しています。
包装資材ですから、世の中のほとんどのお店や会社がお客様になる可能性があります。
でも、あえてパン屋さんを中心に商売をしています。
パン屋さんの側から見れば、
「あの会社に相談すれば、何とかしてくれる」
そんな存在になれる。
実際に、その分野で長く成長を続けています。
これを聞いたとき、
「なるほどなあ」←実はよくわかっていない(笑)
と思いました。
そういえば、英国展に呼んでいただくようになってから、周りのお店をじっくり見る機会も増えていました。
そこで改めて見ると、面白いことに気づいたんです。
どのお店も、何を売っている店なのかが、すぐ分かるんです。
「あそこはアフタヌーンティー」
「あそこは紅茶」
「あそこはスコーン」
「あそこはフィッシュ&チップス」
「あそこは○○」
という具合。
ブランドと、看板商品がちゃんと一致しています。
だから、そういうお店ほど長い行列になっている。
買う理由、欲しい理由が、はっきりしているんですよね。
ところが、OHISAMAはというと、
「英国菓子のお店です」
、、、と言われても、英国展なんだから周りのお店はみんなそう(笑)。
何がウリなのか。
何を買ったらいいのか。
お客様からすると、分かりにくかったんじゃないかと思います。
スコーンもあります。
ビスケットもあります。
ファッジもあります。
コテージパイもあります。
なんでもあります。
そう。
包装資材に例えるなら、お弁当の容器も、飲み物のカップも、レトルト食品を入れる箱も、全部扱っているような状態です。
実はこれ、16年間商売をやってきて、何度も経験してきたことでもありました。
何でもあるパン屋や、何でもあるベーカリーレストラン。
お客様のためにと思って、種類をどんどん増やしました。
でも増やせば増やすほど、
「今日は、あのお店に行こう」
という理由が弱くなっていきました。
パン屋さんとクロワッサン専門店があったら、どっちを選ぶか。
洋食屋さんとハンバーグ専門店があったら、どっちを選ぶか。
一時期、フルーツサンドに絞ったこともありました。
半年くらいは、ちゃんと人が来てくれました。
でも、これも勉強になりました。
流行っているものは、流行が終わると厳しくなるんです。
つまり、
「何を売るか」
だけではなく、
「何年も、それが売れ続けるか」
を考えることも大事なんですね。
そんなことを、身をもって学んできた16年間でした。
じゃあ、なぜファッジを選んだのか。
まず、単純に、自分で作って食べてみて、
「やっぱり、英国菓子の中で一番おいしいな」
と思っているからです。
それに、試作品を家族やお客様に食べてもらったときも、悲鳴に近い声を上げるくらい(笑)、おいしいと言ってもらえましたしね。
でも、それだけではありません。
ファッジは、英国でずっと食べられてきたお菓子です。
エジンバラには70年以上、湖水地方には100年以上続いている老舗ファッジショップがあります。
一時的な流行のお菓子ではありません。
そこには、何か理由があるはずです。
そこで実際に、「ファッジの聖地」と呼んでいる場所まで行ってみました。
すると、次から次へと出てくるんです。
ファッジの話が。
店の話。
職人の話。
歴史の話。
地理の話。
「ああ、これはまだまだ奥が深いぞ」
と思いました。
周りと同じ英国菓子を作れば、みんなが知っているから売りやすいです。
代表的な英国菓子なら、スコーンがあります。
そこそこ買ってもらえると思います。
でも、そこまでです。
ファッジは違います。
英国では当たり前のように食べられている。
なのに、日本ではほとんどの人が知りません。
ファッジを作り始めて3年目になりますが、今だって売れているとはとても言い難い状況です。
でも、この差が僕にはものすごく面白く見えました。
「このお菓子を、日本で知っている人を増やす」
それって、商売として面白いだけじゃありません。
自分がこれからの人生をかけて、やってみてもいい仕事なんじゃないか。
そう思えたんです。
もちろん、ファッジに絞ったのは怖いし、この先本当に大丈夫なのか不安です。
商品を減らすんですから。
普通に考えたら、
「売上も減るんじゃない?」
と思いますよね。
僕もそう思っていました。
ところが、実際にファッジを前面に出して、英国菓子の商品数を絞ってみると、オンラインストアの売上はむしろ増えていきました。
選ぶものが少なくなったことで、
「結局、何を買えばいいの?」
が、分かりやすくなったのかもしれません。
こればっかりは、やってみないと分からなかったことでした。
まだでも微々たるものですけど、、、いやあ、不安です。
そして、意外だったのが時間です。
ファッジに集中するということは、新しく何かを始めることだと思っていました。
でも、実際には逆でした。
「やらないことは何か」を決めたことだったんです。
一つ商品を増やすと、それだけで仕事が増えます。
新しい商品の試作。
原価計算。
栄養成分の計算。
店舗販売用のプライスカードの作成。
商品の裏に貼る品質表示シールの作成。
写真撮影。
オンラインストアの商品ページの作成。
SNSでの発信。
やることは、商品そのものを作るだけではありません。
以前は毎週5品以上の新作を用意していたので、それだけで仕事の時間の中のかなりの時間を使っていました。
今は、それをやめました。
すると、1か月で3日ほど自由に使える時間ができました。
その時間で、今まで作りたくても作れなかったファッジのロゴを考えることができました。
ギフトを作ったり。
こうしてブログを書いたり。
ファッジについて、もっと深く勉強したり。
しかも、以前より労働時間が減りました。
これは、かなり大きな変化でした。
これでファッジをたくさん買ってもらえるようになったら万々歳ですが、世の中そんなに甘くはないのが現実です(T_T)。
「ファッジに集中する」というのは、ファッジをたくさん作ることだけではなかったんですね。
ファッジに関係のないことを、少しずつやめていくことでもありました。
ただし、ノムさんはOHISAMAを「ファッジ専門店」にしたいわけではありません。
ここは、ちょっとややこしいところです(笑)。
ファッジを一番上に置きたい。
でも、その先にあるのは、
「ファッジと英国菓子のあるティータイム」
です。
瀬戸内の広島から、
「今日はファッジを食べながら紅茶を飲もう」
と思える時間を届けたい。
その中で、スコーンがあってもいい。
ビスケットがあってもいい。
ウェルシュケーキがあってもいい。
でも、OHISAMAに初めて来た人が、
「ここはファッジの店なんだ」
と分かる。
そこだけは、はっきりさせたいと思っています。
そして、もう一つ。
ファッジも紅茶も、世界中で親しまれているものです。
だったら、いつかは日本だけじゃなく、海外の人にもOHISAMAのファッジを食べてもらいたい。
瀬戸内の広島で作ったファッジを、
「これ、日本の広島で作っているんですよ」
と言って、世界の人に届けてみたい。
まだまだ先の話ですけど。
夢は思わないと叶いませんから。
でも、ファッジに集中すると決めたことで、その先が少し見えるようになってきました。
だからOHISAMAは、ファッジを一番上に置きました。
売るものを減らしたかったからではありません。
OHISAMAが何者なのかを、もっとはっきりさせたかったからです。
ファッジを入口にして、英国菓子と紅茶のある時間を。
瀬戸内の広島から。
そして、いつかは世界へ。
そんな店にしていきたいと思っています。
書いている人 ノムさん
広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。
公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。
これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。
そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。
