2026/10/13 08:00

初めて英国展に出店したときのことは、今でもよく覚えています。
2024年の夏の終わり、日本橋三越英国展でした。
初めての百貨店催事ですから、もう右も左も分かりません。
見たこともない長い行列にビビり、複雑なレジ操作に戸惑い、商品のお渡しを間違え、、、。
早く忘れたいのに、こういうことって忘れられないんですよねえ。
いやあ、ほんと散々でした(笑)。
逆に、お客様が何を買ってくださったとか、どんな表情をされていたとか。そんなことを覚えている余裕なんて、まったくありませんでした。
そんな初日の営業を終え、スタッフ用のエレベーターに乗っていたときのことです。
着物売り場の方が声をかけてくださいました。
「広島から来たの? あらまあ! 頑張ってくださいね。英国展は人気ですごい混雑だし、自分のところの営業があって、行きたくても行けないから」
そんな言葉をかけていただいて、その日は別れました。
ところが、翌日です。
なんと、その方が長い列に並んで、わざわざ買い物に来てくださったんです。
しかも、ユニオンジャックの帯を巻いて!
いや、これはさすがに涙がちょちょ切れました。
初めての英国展で、右も左も分からず、失敗ばかり。
そんな自分たちに声をかけてくれた人が、翌日、本当に買いに来てくださった。
あのときのうれしさは、今でも忘れられません。
その後の英国展でも、うれしい再会がありました。
以前勤めていた会社の同僚や、社外の勉強会仲間が、何十人も顔を見せに来てくれたんです。
退職したのは、もう15年以上も前のことです。
それなのに、こうして会いに来てくれるなんて。
、、、有り難いですよね。
今の仕事は、ファッジを作って売ることです。
でも英国展に出店するたびに、商品だけで商売が成り立っているわけじゃないんだなと感じます。
人とのつながりに、何度も助けられてきました。
そして、英国展ではお客様の買い物の仕方についても気づかされました。
お客様ってものすごく急いでいるんです。
もちろん、ゆっくり商品を見てくださる方もいます。
でも、会場には買いたいものがたくさんあります。
あのお店にも行きたい。
こっちのお店の商品も買いたい。
そうなると、一つのお店に長く滞在するわけにはいきません。
お客様には、お客様の予定がありますからね。
丁寧に接客することは大事です。
でも、お客様が何を求めているのかを考えなければ、こちらの都合を押しつけることになってしまいます。
そこで、次の新宿伊勢丹英国展2025では、レジ担当のマネキンさんをお願いしたり、会計の方法をシンプルにしたりしました。
初出展のときは、1時間に平均20人ほどのお客様を接客していました。
それが、改善後には1時間に40人ほど。
倍のお客様に対応できるようになったんです。
「朝一は並んだけど、会計がめちゃ早くて助かる」
そんな声をたくさんいただいたときは、やり方を変えて良かったと、しみじみ思いました。
ところで、英国展が始まると、忙しくて3日間、食事にもトイレにも行けなかった。
そんな話を、広島へ帰ってからブログに書いたことがあります。
すると、次の英国展で、あるお客様が差し入れを持ってきてくださったんです。
お茶と、おにぎり。
、、、いやいや、ありがたすぎるでしょう。
こちらは商品を買っていただくために出展しているのに、逆に気遣っていただいてしまいました。
栄養ドリンクをいただいたことだってあります。
お買い物をしてくださるだけでもありがたいのに、差し入れまで。
いったい、どっちがお客様なんだか(笑)。
そして、先日出展した日本橋三越英国展2026でも、忘れられない出来事がありました。
3日目のお昼過ぎに、広告に掲載していただいた商品を欠品させてしまい、4日目に販売する商品がなくなってしまったんです。
楽しみにしてくださっていた方には、本当に申し訳ないことをしてしまいました。
その夜、SNSでお詫びの文章を発信しました。
翌朝は会場にもお詫び文を掲示し、もちろん、ブースでもお客様にお詫びをしました。
そんな中、SNSでのお知らせを読んでくださったお客様たちが、温かいメッセージを添えて投稿を拡散してくださったんです。
Xなんて、見たこともないリツイートの数でした。
お知らせが広まったおかげもあって、商品がないと知らずに来店される方は、ほとんどいらっしゃいませんでした。
さらに、こんなことまでありました。
「昨日から大変だったでしょう」
そう書かれたお手紙と、差し入れをくださった方がいたんです。
欠品でご迷惑をおかけしてしまったのに、こちらを気遣ってくださる。
そのお気持ちが、本当にありがたかったです。
英国展に出店すると、毎回いろんな出来事があります。
もちろん、ファッジを買っていただけるのはうれしいです。
でもこうして振り返ってみると、商品を買っていただくこと以外にも、忘れられないことがたくさんありました。
わざわざ会いに来てくださる。
差し入れを持ってきてくださる。
こちらが困っているときに、声をかけてくださる。
ファッジを売りに行ったはずなのに、こちらが元気をいただいて帰ってくる。
そして、そんなご縁は次の英国展にもつながりました。
新宿伊勢丹英国展2027にも、招待していただいたんです。
そのとき、バイヤーからこんな言葉をかけていただきました。
「SNSのお詫び文を見ましたよ」
「OHISAMAさんは良いお客様に恵まれてますね」
「来年の新宿もよろしくお願いします」
欠品でお客様にご迷惑をおかけしてしまったあとだっただけに、こうした言葉をいただけたことが、身にしみてうれしかったです。
英国展で出会ったお客様や、これまでつながってきた人たち。
そんな皆さんに支えていただきながら、今のOHISAMAがあるんだなと思います。
商売って、つくづくご縁で成り立っているんですよね。
書いている人 ノムさん
広島生まれ。英国菓子と紅茶のある暮らしOHISAMA代表。
公務員の家庭に育ち、大学を卒業後は食品会社に就職。一念発起して会社を退職し、宮島でパン屋を創業したものの繁忙期と閑散期のギャップから体調を崩し僅か5年で離島。その後、業種を変えながら再起を図るもうまくいかず、借金が2,500万円まで膨れ上がる。
これが最後の挑戦と覚悟を決め、安定した人気のスコーンを深堀りしていくことに。すると、その原点であるスコットランドのスクーン城にたどり着き、そこから英国菓子に興味が広がっていく。何世紀も変わらないレシピや伝統といった神秘性にハマり、店では全然売れなかったがとにかく作り続けて、売れ残ったものを食べる日々を過ごす。
そんなある日、東京の英国展に招待されてから人生が大きく動き始める。広島でも英国菓子が売れ始め、中でもファッジは借金を完済できるようになるまで経営の柱に成長。今では英国へファッジの取材へ行ったり、ファッジの歴史を調べることが大きな生きがいになっている。
